骨伝導とは何か? その知られざる技術

 インターネットで「骨伝導」について検索してみても、骨伝導がどんな仕組みなのか、分かるようで分からないというのが正直な感想ではないでしょうか?
 もともと、われわれ一般の人を相手にしていなかった技術だったため、骨伝導の説明も素人向けではなかったのです。そこで、ここではまったく予備知識のない方にも分かるように解説することにします。



最初に「耳で聴く」ことを考えてください。

 難聴の方でなければ、ごく当たり前のように会話をしたり、音楽を聴いたりしています。改めて「聴く」ということを考える機会はあまりないでしょう。
 ただ、音を聴くのは「耳」だと信じて疑わず、そう信じていたところで健聴者にとっては何の問題もないのが普通です。水泳などで耳に水が入ってしまい、周囲の音が聞こえなくなったという経験は誰にでもあるでしょうが、こんな時でもあまり慌てることもないでしょう。
 すぐに水を抜けば、もとに戻ることを経験的に知っているのです。耳栓をすれば音が途絶え、一時的に「聴こえない」状態になるのと同様だと思っているわけです。



 このように、音や声が耳から入ってくるということは、あまりにも常識になっています。
 だからこそ、人の話し声、テレビやラジオからの音などがどうして耳に入り、「聴こえる」ようになるのかを知る必要がないのです。知らなくても「聴こえる」からです。

 そこであえて、耳で聴くことについて簡単に説明しましょう。
 音はまわりの空気を振動させます。その振動が耳たぶで集められるのです。そして耳の穴=外耳道に入ります。ここで鼓膜を振動させます。
 この振動が中耳で増幅されることにより、内耳の聴覚神経の先端部が揺れ動くことになります。この聴覚神経はうずまき管内部のリンパ液中に浮かんでいて、この振動こそが「音」として認識されるのです。

 と、専門的なことを述べたましたが、たいていの人は、

「はあ、そんなものか〜」 という程度でしょう。


ところが、常識に思っている「音⇒耳」が大きく崩れる人物がいるのをご存知でしょうか?


骨伝導の秘密を解く鍵は、作曲家・ベートーベンとクジラです。

 偉大な作曲家・ベートーベンは晩年に聴覚障害となりましたが、ピアノの音を「聴き」ながら作曲を続けたといわれます。
 まさに「非常識」です! 耳から音が入らないのに、ピアノの音を「聴いて」いたのです。単なる超人伝説だから信憑性に乏しい‥‥と思ってしまえば、ここで話は終わりです。
 しかし、聴覚障害のベートーベンが音を聴く方法が科学的に解明されていたとしたらどうでしょうか?
 ベートーベンが行ったことは、口にタクトをくわえ、ピアノに押しつけたのです。これで音が聴こえることは、科学的にも間違っていません。
 なぜなら、ピアノの音には振動があります。この振動をタクトを通して歯に伝え、歯から頭蓋骨を経て、聴覚器官まで伝えることは不可能ではないのです。
 この方法でベートーベンは音を聴き、今の時代にまで残る名曲をつくりだしていたのだと思われます。
 つまり、ベートーベンは耳を使わずに音が伝わる手段を分かっていたのでしょう。おそらく科学的ではなく、経験的なところからマスターしたのでしょうが、偉大な人物はやはり違います。

 人間以外でも考えてみましょう。
 クジラです。
 海で暮らすクジラの耳は、海水や水圧に影響されない体の内部にあります。もし人間と同じように外に耳があった場合、水圧でつぶれてしまうでしょう。少なくとも中耳炎になるのは確実です。従って、外からの音は直接聴こえない構造になっているのです。もちろん、それでもしっかり音を聴いています。
なぜでしょうか?
 クジラは下顎の骨で水中を伝わる音の振動をとらえ、耳に伝えているようです。
 直接耳で「聴く」必要がないわけです。
 一説には、クジラは500km先の相手とも会話ができるといいます。空気の振動とは関係なく、顎から骨伝導で耳骨に集めることにより、人間では不可能なほどはるか遠くの音も聴き取れるのでしょう。

 何となくこれで、「耳で聴く」ということが分かってきたと思います。
 音や声が一般的に「耳で聴いている」といえるのは、空気の振動が耳に伝わり、音や声として認識されることです。しかし、音の振動を直接伝えることで「聴く」こともしているのです。ちょっと専門的な表現をすると、「聴こえる」経路の二種類は以下のようになります。

    (1) 気導音=空気の振動で伝わる経路
    (2) 骨導音=骨の振動で伝わる経路

 つまり音や声は、空気の振動、骨や皮膚組織の振動、2つの経路で伝わるということです。

 耳で聴くということは、「聴く」という行為の半分の役目を負っているだけだということがよく分かったと思います。


では、骨伝導のしくみとは何でしょうか?

 例えば手で耳を塞いだ状態で、何かコトバを発してみてください。

 
自分の声が聴こえますか?

 聴こえますね。耳を塞いでいることから、気導音は遮断されています。でも聴こえます。
 そうです、「骨導音」により自分の声がある程度は聴こえてくるのです。
 でも、ヘンですね。聴こえてくる自分の声が、いつもの声と違って聴こえませんか?
 これは、骨導音だけを聴き、気導音が遮られているからです。逆に、テープレコーダーに録音した自分の声が違った声に聴こえるのは、気導音のみが録音されているからです。口で何かを話すとき、声帯の振動は自分自身の頭蓋骨にも伝わっているので、「骨導音」として自分の聴覚器官にも届いているのです。その音がないからテープの音も異なって聴こえるのです。

 つまり、いつも聴いている自分の声は、気導音と骨導音がミックスされているわけです。 では、「音の振動を直接伝える」とはどういうことでしょう?
 なじみのないコトバで表現すると、「外耳や中耳を経由することなく、内耳のうずまき管に直接音の振動を伝え、リンパ液中に浮かぶ聴覚神経が揺れることで音が聴こえる」となります。
 難しいしくみはともかくとして、骨伝導で音や声をひろうということは、骨に伝わってくる声帯の振動を集めればよいことになります。これを高感度な振動センサー素子で集め、電気的な音声信号に変換することで、誰にでも骨伝導で「聴く」ことが可能になるのです。

 頭蓋骨に伝わる声帯の振動を音声信号に変換するわけですから、メリットとして気導音とは異なった点が生まれます。かんたんに列挙してみましょう。

@ 防水化が容易である (屋外や水中でも使用できる)
A 耐騒音性に優れている (外部の騒音・雑音に影響されにくい)
B 装着位置の自由度が高い (口の近くにマイクがなくてもよい)

 さまざまな利用シーンに対応可能だということがわかると思います。


骨伝導の可能性とは何でしょうか?

 骨伝導で聴くための基本技術となるのは骨伝導スピーカーです。
 原理は耳から空気の振動を介して音が入らなくても、何らかの方法で振動を聴覚器官に直接伝えれば音として聴こえるというものです。
 株式会社テムコジャパンでは、音声信号を振動に変換する小型かつ高出力の骨伝導スピーカー(特許取得)を開発しました。さらにヘッドセットに組み込むことで、今までにない使い勝手の良さを実現できたのです。

 骨伝導で伝えるための基本技術は骨伝導マイクです。骨に伝わってくる声帯の振動を高感度の振動センサー素子で集め、音声信号に変換します。取付位置は、頭部の比較的固い場所ならどこからでも声帯の振動をピックアップできます。
 当サイトでは外耳道からピックアップする「イヤーマイク」と、頭部からピックアップする「ヘッドセット」の2タイプを用意しています。また、骨導音を明瞭な音声に変換するために最適化した補正回路を組み込み、各種通信機器に適合した製品を提供しています。
 すべて株式会社テムコジャパンの製品のみを取扱います。

 骨伝導で「音を聴く・声をひろう」技術を最先端の通信技術に広く応用することは、さまざまなシーンで付加価値の高いコミュニケーション・ツールとして活躍することになります。テムコジャパンはそんな製品を開発してきました。
 しかし今までは活躍が特殊な場だけだったことから、一般の方々への知名度は低かったのです。しかもその特殊な場というのは、おもに軍隊、警察関係などでしたから、完全なクローズマーケットでした。
 この技術をより一般の方々に、誰にでもかんたんに使えるものを、というコンセプトでこのサイトは運営をはじめました。

そして今では一般向けの骨伝導製品も多種多様になりました。


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